ここで作られる連作式の短編映画は、
大規模な劇場公開作品とは
少し雰囲気が異なるかもしれません。
まず ”世界”があり、”生活”があって、
そこに生きる ”登場人物”の息遣いが聞こえ、
喜び、悲しみ、怒り、驚き、恐れ、嫌悪…
様々な”感情”が交錯する時、
自ずと”物語”が紡ぎ出されていきます。
その”物語”を具現化するために、
フィルムフォーマットに
可能性を見出しています。
デジタルシネマの普及により、
フィルム撮影の敷居が
一層高くなりつつありますが、
フィルムが映し出す映像は、
現像液との化学反応から生まれる
独特な色調や、フォーカスの甘さ、
フリッカーや粒子の揺れが、
まるで呼吸する絵画のような
奇妙なリアリティを纏い、
観る人の感覚に直接訴えることができる
原始的で魅惑的な映像表現だと思います。
もし、スクリーンに映し出された映像の
それ自体が誰かの”記憶”や”夢”だとしたら、
一体それは誰が見ているのか?
その謎を追いかけた先に、
各エピソードのテーマとは別の ”何か”が
浮かび上がる作品集になると考えています。
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制作環境として現状を考えてみますと、
1本の作品に掛けられるコストは、
せいぜい20分から30分が限界です。
アニメのテレビシリーズなら
一話分程度の短い時間に、登場人物の背景と
物語を作品世界に詰め込んでいます。
通常、脚本を書いてからロケハンをして、
キャスティングなどを経て制作が進みますが、
私たちは、まず画にしたい舞台を手に入る事が
出来て初めて、レンズを揃え、
どの種類のフィルムに捉えるかを決め、
次に配役が決まった段階で、
物語を書いて行きます。
制作する上で特に大切にしているのは、
“スクリーンに映し出された画が動いて見える”
という映像の原点への純粋な眼差しを忘れず、
娯楽性と芸術性の両立を目指して行く事です。