物語

東京は下町。台東区。
何でも昭和の始めから続く風呂屋があって、
そこには無口で頑固で酒飲みな御主人と、
どういう訳か、その御主人とは
釣り合わないほどの美人な奥さんが居て、
二人で銭湯を切り盛りしていたが、
ここに来て予てから御主人の酒癖が祟り、
奥さんが出て行ってしまう。
これに懲りて直るどころか
さらに酒浸りな御主人。
見兼ねた近所のお節介な友人たちが
訪ねてきて、仲直りの指南をするが…
男と女。夫と妻。
切るに切れない腐れ縁を描く人情噺。


下町の銭湯を舞台にした夫婦噺

性懲りも無く酒を呷る駄目な亭主と、愛想も
尽きかけた女房との間に、夫婦の試練が訪れ
ます。 喧嘩の理由は明らかにされませんが、
お酒が原因であることは明白です。銭湯に通
う隣人たちは、この亭主にそれぞれの解決策
の様な助言を指南しますが、その背景にはそ
れぞれの人生や家族の問題が見え隠れしてい
ます。 この亭主は、その3人にあるものが欠
けていることに気がつき、その3つの助言を
選択しません。亭主の取った行動に対して、
帰って来た妻はどの様な態度を示すのか。 
亭主の心遣いが嬉しいのか、困惑しているの
か。相手を、自分を許せるのだろうか。  
振り子の様に妻の心が揺れ動き、理性では判
断が出来なくなってしまいます。最後の妻の
複雑な表情は何を思っているのでしょうか。
そして顔にお湯をかけた時、果たして妻はこ
れで良かったのでしょうか。それともまた同
じ事の繰り返しとなるのでしょうか。   


初めての脚本と演出の共同作業

この映画を作る上で参考にしたのは、古典落
語の世界でした。その中でも夫婦の仲を扱っ
た「厩火事」や「替り目」や「芝浜」などの
噺のいくつかは、酒飲みの亭主とどの様に離
縁せず折り合いを付けているのか面白おかし
く語られています。            
今回初めて脚本を他の方にお願いしました。
実際のこの銭湯の主人であり、脚本も書かれ
ている市村さんと知り合ったのがきっかけで
した。市村さんからは、喧嘩して奥さんが出
て行ってしまう話はどうかという提案があり
、まさに挑戦したいコンセプトにぴったりで
、無口で頑固な御主人に結末を左右する美し
い女房と、人は悪くないがお節介な友人たち
による会話劇という構図が出来上がって行き
ました。                
また、この脚本に対してとある実験をしてい
ます。これは世界中の映画を観てもなかなか
やっていない事なのですが、この映画にはヒ
ミツがあります。それは映像を注意深く観て
いないと気がつきません。そのヒミツが分か
った時、単に映画が物語を追うのではなく、
映像そのものの面白さを追求出来るメディア
であるということに気がついて頂けることと
思います。               


キャラクターに息吹を与える出演者たち

主役である銭湯の御主人である三島徹夫を演
じるのは、監督の石出裕輔が勤めている職場
で知り合って意気投合し、初めての映画出演
に挑んだ稲毛弘隆さん。ご本人も浅草界隈で
育ったということもあり、いきなりの映画出
演にも関わらず下町の銭湯の映像に違和感な
く馴染み、最後まで全力で演じ切って頂いた
のですが、2020年2月に病により急逝。折し
も荒編集がひと段落し、映像を確認した翌日
の事でした。              
主人公の妻である三嶋雪子役を演じるのは、
劇場公開作品で主演を務める活躍に留まらず
CMやミュージックビデオへの出演や、シン
ガーソングライターとしても活動されている
みやびさん。短い出演ながら複雑な妻の心境
を見事に表現し。世界中の国際映画祭で5つ
女優賞を受賞しました。村雨仁役には昭和か
平成にかけて、数々の名作映画で脇を支え続
けた村添豊徳さんが、アルコール中毒の役柄
でフィルムの世界に見事な佇まいで馴染んで
います。他にも、映画やテレビドラマや舞台
だけでなくラジオ番組のディレクターまで幅
広く活躍されている坪内悟さんが、倉塚一郎
役として印象に残る個性的なキャラクターを
好演。また、主演の稲毛さん同様に、同じ職
場で出演を依頼され、快諾して頂いた橋本智
子さんが、銭湯のお手伝いさんの河野早苗役
としてスクリーンでその存在感を発揮してい
ます。                 
      

味わいある音楽

どこかレトロで懐かしい音楽ミュゼットは、
20世紀初頭にフランスのパリの下町で生まれ
、フランス中南部やイタリア移民の人たちが
故郷を想ってカフェなどで演奏されて広がっ
たと伝えられています。 どういう訳か、日本
の銭湯とそこで展開する夫婦の物語に相性の
良さを感じ、ドラマや映画等で活躍されてい
る作曲家の黒木千波留氏が本作の為に書き下
ろしたオリジナルスコアを手がけ、日本を代
表するアコーディオン奏者としてライブ等の
舞台やテレビで活躍されている桑山哲也氏が
、この和製ミュゼットを奏でることで、作品
世界にさらなる彩りを添えています。   


映画祭上映歴・受賞歴

<スクリーン上映>

アテネ国際芸術映画祭
(ギリシャ)
【 観客投票第3位 】
【 最優秀作品賞受賞 】
《アスターシネマにて上映》

プラハインディペンデント映画祭
(チェコ共和国)
【 最優秀監督賞受賞 】
《ルツェルナシネマにて上映》

ニューヨークムービーアワード
(アメリカ)
【 最優秀ドラマ賞受賞 】
《クレインシアターにて上映》

ポートランド短編国際映画祭
(アメリカ)
【 最優秀主演女優賞受賞 】
《クリントンストリートシアターにて上映》

フィレンツェ映画祭
(イタリア)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《アストラシネマにて上映》

ジャカルタインディペンデント映画祭
(インドネシア)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《グリパスタジオにて上映》

日本芸術センター 第13回映像グランプリ
(日本)
【 入選 】
《日本芸術センターにて上映》
《日本芸術会館にて上映》


<オンライン上映>

ニューヨークトライステート国際映画祭
(アメリカ)
【 最優秀短編映画賞受賞 】

ドバイフィルムフェスティバル
アラブ首長国連邦)
【 最優秀脚本賞(金賞)受賞 】

カンヌ・コンチネンタル映画祭
(フランス)
【 最優秀脚本賞受賞 】

サーベスト国際映画祭
(モルドバ共和国)
【 オフィシャルセレクション選出 】

オースティンリフトオフ映画祭
(アメリカ)
【 オフィシャルセレクション選出 】

アムステルダムリフトオフ映画祭
(オランダ)
【 オフィシャルセレクション選出 】

東京インディペンデント映画祭
(日本)
【 ベスト50選出 】


<受賞歴>
ヴェニスインディペンデント映画祭
(イタリア)
【 最優秀外国語短編映画賞受賞 】

第12回ムンバイ国際短編映画祭
(インド)
【 映画祭特別賞受賞 】

ブルノ映画祭
(チェコ共和国)
【 最優秀インディペンデント短編映画賞受賞 】

ドイツ国際映画祭
(ドイツ)
【 Honorable Mention 受賞 】

ブエノスアイレスインディショートアワード
(アルゼンチン)
【 最優秀脚本賞受賞 】
【 最優秀撮影賞受賞 】

ソフィアワールドフィルムフェスティバル
(ブルガリア)
【 最優秀短編映画賞受賞 】

レッドムービーアワード
(フランス)
【 最優ロマンス映画賞受賞 】

アートフィルムアワード
(北マケドニア)
【 Honorable Mention 受賞 】

ユアウェイ国際映画祭
(マルタ)
【 最優秀短編映画賞受賞 】
【 最優秀監督賞受賞 】
【 最優秀主演男優賞受賞 】
【 最優秀助演女優賞受賞 】
【 最優秀助演男優賞受賞 】
【 最優秀カラー編集賞受賞 】
【 最優秀セノグラフィー賞受賞 】

ヴェニス芸術映画祭
(イタリア)
【 最優秀主演女優賞受賞 】
【 最優秀新人男優賞受賞 】
【 最優秀監督賞受賞 】

ブリュッセル国際映画祭
(ベルギー)
【 最優秀主演男優賞受賞 】

ロンドンムービーアワード
(イギリス)
【 最優秀映画賞受賞 】

ストックホルムシティフィルムフェスティバル
(スウェーデン)
【 最優秀短編映画賞受賞 】
【 最優秀主演女優賞受賞 】
【 最優秀監督賞受賞 】

8&1/2フィルムアワード
(イタリア)
【 最優秀オリジナル短編映画賞受賞 】
【 最優秀監督賞受賞 】
【 最優秀オリジナル脚本賞受賞 】

スイス映画祭&脚本コンペティション
(スイス)
【 最優秀外国語短編映画賞受賞 】
【 最優秀外国語短編脚本賞受賞 】

パリフィルムアワード
(フランス)
【 コメディ賞 金賞受賞 】
【 ドラマ賞 銀賞受賞 】
【 監督賞 銀賞受賞 】
【 主演男優賞 銀賞受賞 】
【 編集賞 銀賞受賞 】
【 サウンドデザイン賞 銀賞受賞 】

ハリウッドゴールドアワード
(アメリカ)
【 最優秀コメディ受賞 】
【 最優秀短編監督賞受賞 】

ポルトガルインディフィルムフェスティバル
(ポルトガル)
【 最優秀主演男優賞受賞 】
【 最優秀監督賞受賞 】
【 最優秀作曲賞受賞 】

ベルリンインディフィルムフェスティバル
(ドイツ)
【 最優秀主演女優賞受賞 】
【 最優秀作曲賞 】
【 最優秀サウンドデザイン賞受賞 】

シネ・パリフィルムフェスティバル
(フランス)
【 最優秀主演女優賞受賞 】
【 最優秀サウンドデザイン賞受賞 】

ハリカルナッソス国際映画祭
(トルコ)
【 最優秀サウンドトラック賞受賞 】

トラヴァンコールインターナショナルフィルムアワード
(インド)
【 最優秀撮影賞受賞 】
【 最優秀衣装賞受賞 】
【 最優秀音楽監督賞受賞 】
【 最優秀短編プロデューサー賞受賞 】

ミランゴールドアワード
(イタリア)
【 最優秀短編映画賞受賞 】
【 最優秀監督賞受賞 】

フローレンスフィルムアワード
(イタリア)
【 最優秀短編映画賞受賞 】


<入選歴>
ボーデン国際映画祭
(スウェーデン)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《ファイナリスト》

ページェント国際映画祭
(インド)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《ファイナリスト》

アートジラフ国際映画祭
(フランス)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《セミファイナリスト》

レッドフォックス国際映画祭
(ジョージア)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《クオーターファイナリスト》

ポルトガルレムール国際映画祭
(ポルトガル)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《クオーターファイナリスト》

スノーレパード映画祭
(スウェーデン)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《クオーターファイナリスト》

フォローザアロー国際映画祭
(ハンガリー)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《クオーターファイナリスト》

ブエノスアイレス国際映画祭
(アルゼンチン)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《 作品賞部門 》
《 サウンドトラック賞部門 》

マドリッドフィルムアワード
(スペイン)
【 オフィシャルセレクション選出 】
《 脚本賞部門 》
《 サウンドトラック賞部門 》

第9回バヤモン国際映画祭
(プエルトリコ)
【 オフィシャルセレクション選出 】

ベオグラード国際映画祭
(セルビア)
【 オフィシャルセレクション選出 】

インターナショナルワールドフィルムアワード
(イギリス)
【 オフィシャルセレクション選出 】

オーストラリア映画祭
(オーストラリア)
【 オフィシャルセレクション選出 】

フィルムランゲージ国際映画祭
(フランス)
【 オフィシャルセレクション選出 】

アジア映画祭
(インド)
【 オフィシャルセレクション選出 】

メキシコ映画賞
(メキシコ)
【 オフィシャルセレクション選出 】

ワールドシネフェスト
(ポルトガル)
【 オフィシャルセレクション選出 】

バンクーバーインディペンデント国際映画祭
(カナダ)
【 オフィシャルセレクション選出 】

ブラジル国際映画祭
(ブラジル)
【 オフィシャルセレクション選出 】

フランスモダン国際映画祭
(フランス)
【 オフィシャルセレクション選出 】

イタリア国際映画祭
(イタリア)
【 オフィシャルセレクション選出 】

ギリシャ映画祭
(ギリシャ)
【 オフィシャルセレクション選出 】

トップショット国際映画祭

(ポーランド)
【 オフィシャルセレクション選出 】


キャスト

稲毛弘隆
みやび
村添豊徳
坪内悟
橋本智子


スタッフ

  脚本:市村政晃
撮影監督:松下茂 
  録音:八木武志
    田山滋
  編集:石出裕輔
   衣装:名取みやび
  美術:石出裕輔
   音楽:黒木千波留
  アコーディオン演奏:桑山哲也         
 整音:坂井泉
  合成:岡本泰之
 監督補:根岸摩耶
撮影助手:堀越桐郎
メイキング:飯野歩  
製作応援:松田彰 
    撮影応援:阿部崇     
    石出亮
    協力:露木栄司  
     菊川仁史
     石出実希
     中桐崇文
      監督・製作:石出裕輔       

フィルム:KODAK VISION3 500T
現像・HDテレシネ:東京現像所
製作協力:Studio AGIRA

2022年 / 16mm / 19min58sec / STEREO